No.1299(2025年5月号)
特集
No.1299(2025年5月号)
特集
三田評論
2025年5月号表紙
文久二年、神奈川奉行所が攘夷派の襲撃を警戒するなかで、成仏寺(横浜市神奈川区)で始まった、大村益次郎ら幕府委託学生九名に対するヘボン (James Curtis Hepburn) 博士による講習は、おそらくわが国における英語教育の始まりを画すものだが、以来一六〇年を超えて今日まで、その議論は絶えることがない。「<特集>英語教育を考える」は、「読み書き」か「聞く話す」かをめぐる昔ながらの葛藤から、近時のAIがもたらす衝撃まで、取り上げる論点は広範かつ深い。一貫校から大学までの学習経路を踏まえつつ、目指すべきは批判的思考力をともなう高度な英語コミュニケーション能力との主張に納得。「話題の人」での現代詩創作実践の紹介も英語教育議論に通底する要素を感じる。先の大戦における戦没慶應義塾関係者二二三一柱。慶應義塾史展示館企画展「ある一家の近代と戦争」で取り上げられる上原三兄弟の事績は、戦後八〇年に相応しい。
(赤木完爾)
AIによる自動翻訳が飛躍的に発展し、外国語に関してその恩恵を受けている人も多いと思います。このAI時代に英語教育はどうあるべきか? 「読み書き」から「聞く話す」重視に転換すべき、という議論は果たしてそれでよいのか? 開国以来150年以上、日本人を悩ませてきた英語教育のあり方について、英学塾として学塾の礎を築いた慶應義塾から問う特集です。
新井高子さん
詩人、埼玉大学教授、詩誌『ミて』編集人・塾員
インタビュアー:朝吹亮二(詩人、慶應義塾大学名誉教授)
現代詩の詩作に与えられる賞である「大岡信賞」を受賞された新井高子さん。小学生の時から詩を書かれ、現在、埼玉大学で日本語教育に携わりながら、日本語表現の新境地を絶えず切りひらいています。震災以来の東北地方方言との出会いが、どのような新しい表現を生んだのか。同じく詩人である朝吹亮二先生による大変興味深いインタビューです。
清潔で快適な暮らしになくてはならないタオル。その一方で、贈答品がタンスの肥やしになっているご家庭も多いのではないでしょうか。タオルなんてどれも同じ……と思いきや、好みは千差万別。素材や加工、生産地によって風合いや特色も様々です。そんな知られざるタオルの奥深き世界を、プロの視点でご案内致します。
母校を思う塾員と篤志家の皆様により、義塾の教育研究活動を財政支援する目的で設立された1世紀余の歴史を有する組織です。
会員の皆様にはご加入期間『三田評論』を贈呈いたします。